どんな研究をしているのですか?

てんかん・神経難病を治すために色々な基礎~臨床研究を行なっています。

1. てんかんの原因遺伝子の研究

てんかんの一部は遺伝子の異常から発病します。
臨床研究部では他施設との共同研究により、

  • 乳児重症ミオクロニーてんかん
  • ミオクロニー失立発作てんかん
  • 側頭葉てんかん
  • GEFS+
  • 進行性ミオクローヌスてんかん
  • Bilateral periventricular nodular heterotopia

などの遺伝子研究を行なっています。

2. てんかんの診断・治療ガイドライン作成に関する研究

てんかんの診断・治療ガイドラインの作成は、てんかんにかかわる第1線の医師や医療関係者に強く望まれています。厚生労働省精神・神経疾患研究委託費(藤原班)の支援を得て、全国のてんかん医療にかかわる施設が協力しててんかんの診断・治療のガイドラインを作成し、それを公刊し、またオンラインでアップデートの情報を閲覧可能にすることにより、全国レベルでてんかん医療の水準が向上するとともに患者さんの生活の質の向上に寄与することが期待されています。

3. SPECT (SISCOM)を用いたてんかん原性焦点の同定に関する研究

これまでは、てんかんの発作時および発作間欠時のSPECT所見を肉眼的に比較しながら脳血流の変化を評価し、てんかん焦点を推定してきました。今回、標準化脳を用いた統計学的手法による評価を導入し、発作時と発作間欠時の血流変化域を自動的に描出し、簡便でより客観性にとみ、判読者の経験に左右されにくい評価法として確立することを目標に研究しています。

発作時SPECT 発作間欠時SPECT 統計処理後MRI重ね合わせ画像

4. 光感受性てんかんの病態と治療の研究

ポケモン事件で代表される光感受性てんかんについて、我々は

  1. 光感受性には、1)長波長赤色光に依存した波長依存性の光感受性と、2)光量依存性の光感受性があることを見つけました。
    Takahashi, Y., Fujiwara, T., Yagi, K., and Seino, M.: Wavelength specificity of photoparoxysmal responses in idiopathic generalized epilepsy. Epilepsia 36(11), 1084-1088, 1995.
    Takahashi, Y., Watanabe, M., Fujiwara, T., Yagi, K., Kondo, N., Orii, T., and Seino, M. : Two different pathological conditions of photoparoxysmal responses in hereditary dentatorubral-pallidoluysian atrophy. Brain & Development 19, 285-289, 1997.
    Takahashi, Y., Fujiwara, T., Yagi, K., and Seino, M.,: Photosensitive epilepsies and pathophysiological mechanisms of photoparoxysmal response, Neurology, 53, 926-932, 1999.
  2. 高輝度の光刺激下では、波長依存性と光量依存性の光感受性が両方とも機能していて、長波長赤色光を遮断し、光量を抑えるガラスフィルターを用いると光突発脳波反応が抑えられることを見出しました。
    Yukitoshi Takahashi, Tetsuya Sato, Kiyoshi Goto, Misaki Fujino, Tateki Fujiwara, Mutsuo Yamaga, Takayuki Ito, Haruo Isono, Naomi Kondo. Optical filters inhibiting television-induced photosensitive seizures. Neurology 57: 1767-1773, 2001.
  3. 放送ガイドラインの普及と光感受性発作の推移を調査しました。
    ポケモン事件後、「アニメーション等の映像手法に関するガイドライン」が1998年4月に策定され、主にテレビ番組の3Hz以上の点滅(特に赤色)・強い輝度変化・パターン(模様)が規制されるようになり、その規制のために考案された映像計測機器が、6月以降徐々にテレビ局に普及しました。全国調査でPS 初発症例数を経年的に見てみると、ポケモン事件による症例を除いても1997・98年が最大で、1999年以降減少してきていることが分かります。誘発光の種類ごとにPS初発症例数を見てみるとテレビ番組による初発例がかなり減少しているための現象であることが分かります。これらのことから、放送ガイドラインがテレビ番組によるPS防止に有効であると考えています。
    Yukitoshi Takahashi, Tateki Fujiwara, Effectiveness of broadcasting guidelines for photosensitive seizure prevention, Neurology, 2004; 62: 990 – 993.

5. てんかんリハビリテーションの研究

てんかんの包括的リハビリテーションのあり方を研究しています。療育・心理・作業・理学・言語・ソーシャルワーカー・看護および医師の各部門が学際的に協力して、外部の医療・福祉ネットワークを活用しながらいかにてんかんリハビリテーションを効率的に成立させうるかを、実証にもとづいて検証していきます。

6. 抗てんかん剤の催奇形性に関する国際共同研究

てんかんの治療を受けながら妊娠出産を希望する患者さんはたくさんいます。妊娠を希望する患者さんにとって、抗てんかん剤が胎児に及ぼす影響は最大の関心事です。抗てんかん剤が胎児に及ぼす影響についてこれまでも研究されていますが、前方視的に十分多くの症例をもとに検討したものはありません。当院ではヨーロッパの国々と共同して研究を進めています。この研究では、妊娠16週以内に妊娠が主治医に報告されて症例を登録して、生まれた子供が一歳になるまで経過を観察しています。
この研究が進めばカルバマゼピン(テグレトール)などの抗てんかん剤を服用しながら妊娠した場合に、どの程度の胎児に異常がでるかが明らかにされます。(カルバマゼピン単剤服用が胎児に及ぼす影響は、カルバマゼピンを服用しながら妊娠した症例を1000例集める必要があります。)
以下に現在の進捗状況を示します。またこの研究はてんかん診療に携わっている医師であればどなたでも参加できます。参加の希望がある先生は、こちらまでご連絡ください。調査用紙を電子メールでお送りします。症例を登録していただいた先生には中間報告をお送りします。

Classification of the epilepsy in 1919 prospective pregnancies
2003年5月までにイタリアの本部に登録された患者のてんかん診断です。

Epilepsy Total Percentage
Generalized 796 41%
Localisation-related 1004 52%
Not ascertained 13 1%
Undetermined 64 3%
Missing data 13 1%
Not epilepsy 29 2%
Grand Total 1919 100

Figure 1
Outcome of prospective pregnancies

すでに出産(妊娠の中断を含む)まで調査が進んだ1582例の妊娠の結果。

7. グルタミン酸受容体自己抗体による中枢神経障害の診断・治療の研究

グルタミン酸受容体は、中枢神経系における高次脳機能を担う重要な分子です。一部のグルタミン酸受容体に対する自己抗体が、ラスムッセン脳炎や傍腫瘍症候群を来たし、様々な中枢神経症状を呈する事が最近知られてきていますが、我々は、今まで検討された事のないグルタミン酸受容体の自己抗体測定系を確立し、ラスムッセン脳炎・急性脳炎などで、GluRε2に対する自己抗体の存在を、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群においてGluRδ2に対する自己抗体を見出しました。

高橋幸利、小児期の中枢神経系感染症による難治てんかんにおける抗GluRε2自己抗体の存在、日本小児科学会誌、2002; 106: 1402-11.
高橋幸利、松田一己、西村成子、八木和一、Rasmussen脳炎と抗神経抗体、神経内科、2003; 59(1): 38-44.
Y. Takahashi, H. Mori, M. Mishina, M. Watanabe, T. Fujiwara, J. Shimomura, H. Aiba, T. Miyajima, Y. Saito, A. Nezu, H. Nishida, K. Imai, N. Sakaguchi, N. Kondo, Autoantibodies to NMDA receptor in patients with chronic forms of epilepsia partialis continua. Neurology 2003 ;61:891-896.

8. 手術摘出標本によるてんかん原性病変の組織化学的研究

  1. 当センターでは難治てんかん症例の外科治療を長年行なってきており、数百例の経験があります。
  2. 外科手術例の中には様々な病理像がありますが、先天性形成異常を基盤としながら腫瘍性の性質をもつ、てんかん原性病変の中でも特異的な位置を占める DNT(Dysembruoplastic Neuroepithelial Tumor)について、てんかん原性の観点からその組織学的背景、神経伝達系への影響、電気生理学所見、さらに継時的な形態、機能的画像所見の解析によりその病態を解明すると共に、外科治療の対象として切除範囲の設定や再発予後などに有用な知見を得ることを目指しています。

    DNT組織

  3. 内側側頭葉てんかんとベンゾジアゼピン受容体の研究
    内側側頭葉てんかんの海馬などでベンゾジアゼピン受容体が減少していることを発見しました。Sata Y, Matsuda K, Mihara T, Aihara M, Yagi K, Yonekura Y: Quantitative analysis of benzodiazepine receptor in temporal lobe epilepsy: 125I-iomazenil autoradiographic study of surgically resected specimens. Epilepsia 2002: 43; 1039-48

9. マイクロニューログラム法による交感神経活動測定に関する研究

マイクロニューログラム法により交感神経活動を直接導出することにより、これまでの各種薬物負荷による方法や、血中カテコールアミンの頻回の測定よりも確実かつ詳細な交感神経活動の診断が可能です。

10. CO2レーザーによる体性感覚誘発電位測定に関する研究

CO2レーザーによる痛覚刺激により誘発される大脳の体性感覚誘発電位を測定することにより、これまでの電気刺激による体性感覚誘発電位では捉えられなかったAδ線維とC線維の障害を検出できるようになります。

11. 軽度認知障害の前方視的・後方視的研究

痴呆予備軍とされている、軽度認知障害(mild cognitive impairment以下MCI、)症例の早期発見と、痴呆への進展をブロックする可能性を追求することで、高齢者のQOLを改善するだけでなく、痴呆介護に伴う社会負担の軽減をめざしています。前方視的にフォローしている症例の臨床診断を試み、それぞれの背景疾患に最適の治療的介入を試みることは、高齢者のQOLを高めることにつながると考えています。

12. スモンに関する調査研究

昭和40年前後に発生したキノホルムによってスモン(SMON:subacute myelo-optico-neuropathy)患者さんたちの発症後から経過をおって、調査研究を行なっています。患者さんたちの高齢化に伴い、医療的な面だけではなく、介護・保健・福祉の分野まで調査対象となり、患者さんたちの経過を追うだけではなく、恒久対策にも貢献しています。

13. 特定疾患患者の地域ケアシステム構築に関する研究

特定疾患患者さん、とりわけ神経難病と呼ばれる患者さんたちのQOL(Quality of Life)の向上ためには、地域の中でのケアのシステム化が必要です。
静岡県では県が構築した難病ネットワークとともに、保健師などが作る難病ケアシステム研究会があります。
また、静岡市では行政と患者団体・医療・福祉関係者が一緒になって静岡難病市民ネットワークが構築され、さまざまな活動を開始しています。
こういった地域に根ざしたケアシステムの構築を研究・実践していくものです。

14. 筋萎縮性側索硬化症の疫学調査

重症神経難病である筋萎縮性側索硬化症の静岡県における患者の罹患状況や在宅での状況などを調査し、患者さんたちのQOLの向上に資するものです。

15. 急性辺縁系脳炎等の自己免疫介在性脳炎・脳症に関する多施設共同研究

こちらからダウンロードしてください(平成25年4月1日更新)
急性辺縁系脳炎等の自己免疫介在性脳炎・脳症に関する多施設共同研究( PDF:2757KB)

その他にも、脳磁図を用いたてんかん病態生理研究・パーキンソン病の磁気刺激療法に関する研究・てんかんをもつ乳幼児の精神運動発達の研究・重症心身障害児(者)のてんかんの診断・治療に関する研究などを行なっています。