No.8 2004
No.7 2004
No.6 2003
No.5 2003
No.4 2003
No.3 2002
No.2 2002
No.1 2002
       
No.2 2002夏
       
目 次  外来紹介
    妊娠と抗てんかん薬
    てんかんと自動車運転免許についてお知らせ
    第2回 静岡神経医療センター 公開セミナー
    第10回 静岡神経医療センター てんかんセミナー
    編集後記
     
       
外来紹介
       
   前回はてんかん外来について紹介しました。今回は神経内科外来についてお話しします。まず、「『神経内科』とはどんな人がかかる科ですか?」、ときどきこういう質問をされる方がいます。神経内科は脳神経外科に対比して、神経疾患を内科的に扱う意味でそう呼ばれています。具体的に言いますと、脳内や脳から手足に延びている神経・筋肉が病的変化によっておこる病気を治療する、『内科』の中の専門科のことを言います。

 当院でよくきかれるパーキンソン病をはじめとする神経難病と呼ばれる様々な病気の専門病院として、診察は完全予約制をとっています。(再診の緊急時は随時受け付けます。)初診の場合はてんかん外来同様、電話にて予約を入れて下さい。診察は月曜日〜金曜日の13:30と14:30からとなっています。受診時は、保険証・紹介状・レントゲン写真などを持参して下さい。

 再診の場合は、来院時に診察券と予約表を神経内科処置室に直接お出しください。担当医別に来院順番と予約時間で診察の順番が決まり、診察室に呼ばれます。また外来では、必要に応じて理学療法や言語療法などを行っています。理学療法では歩行解析用の機械を取り入れ、指導に役立てています。言語療法では、摂食・嚥下障害の検査や指導も行い、栄養指導では食事をとりにくい方への調理方法など、家族への指導も行っています。

 その他に特別外来として、物忘れ外来・遺伝カウンセリング外来・転倒予防外来・ミオパチ外来もありますので、初診の予約と同様に、お気軽にお問い合わせ下さい。今後も出来るだけ診療がスムーズに行くように努力していきます。 (神経内科外来看護師 小澤 絵美)
     
 
妊娠と抗てんかん薬
   抗てんかん薬には全て、多かれ少なかれ催奇形性 が認められ、妊娠中に抗てんかん薬を服用していると、生まれてくるこどもの奇形発生率が高くなることが知られている。一般人口における奇形(ヘルニアなどの小奇形を含む)の発生頻度は、約5%と言われているが、抗てんかん薬を服用している場合は、大まかにはその2倍とみなされている。単剤より2剤、2剤より3剤と併用薬剤が増えるにつれて催奇形性のリスクが高まることは、我が国での多施設研究からも確かめられている。単剤治療では服薬していない婦人と較べて、催奇形性のリスクは変わらないとする報告もあるが、単剤でも服薬量が増えるにつれてリスクも高くなるとの報告もある。バルプロ酸  による二分脊椎  に関しては、一日投与量1000mgを超えるとリスクが高くなるとする欧州での多施設研究がある。

 しかし、個々の薬物の影響については本当のところは良く分かっていなく、多くの患者や医師が妊娠中の発作に起因する催奇形性と、発作を止めるために用いる抗てんかん薬による催奇形性のバランスという問題に直面している。母親のてんかん発作が、胎児や母親自身に与える危険性も無視できない。てんかんをもつ婦人には実際のところ複数の抗てんかん薬が投与され、個々の薬物の評価が困難になり、問題をより複雑にしている。異なるそれぞれの薬の催奇形性を比較するためには、膨大な数の妊娠に関する情報が必要であり、一施設での情報では無論足りなく、また一つの国だけの情報でも不十分であり、全世界規模での情報の集積と分析が求められる。また偏りを避けるためには、その女性の妊娠の転帰のわかる前に登録し、前方視的に調査する必要がある。

 このためヨーロッパの研究グループが、抗てんかん薬の催奇形性に対するヨーロッパ連合行動(EURAP)を立ち上げている。すべての参加グループが同じプロトコールを用いるので、客観性のあるデータが集積され、より正確な評価が可能になる。EURAPは世界規模での研究を希望しており、日本てんかん学会もこれに協力することを決め、当院がコーディネイターとなり国内のデータを収集・整理して、イタリアのミラノにあるEURAPの中央センターへ報告する運びとなった。現在、田中正樹、吉田綾、両先生の努力の結果、徐々にではあるが登録の実績があがりつつある。このプロジェクトが推進されると、妊娠・挙子を希望しているてんかんを持つ婦人に対してより適切な助言が可能となり、また本人自身の自己決定に役立つ良質な情報を提供できるようになる。 (副院長 藤原 建樹)
     
       
てんかんと自動車運転免許についてお知らせ
   皆さんご自宅に改正道路交通法のあらましという警察庁交通局監修の冊子が配られていませんか?この中に、障害者に係る免許の欠格事由の廃止等 ○免許の欠格事由の見直し という項目があります。

 簡単に解説しますと、これまでてんかんをもつ人は一律に免許がとれないと定められてきたものが、2002年6月1日以降は免許を受けようとする人が自動車などの安全な運転に支障がないと個別に判断された場合には、免許が取れることとなりました。

 つまり、発作が止まっていて安全に運転のできる方はとってよろしい、ただし発作がとまっていなくて、運転は危険であるとみなされる方はだめですよと、一人一人の状態に合わせて合理的に判断されるわけです。これは、てんかんをもつ人にとって朗報です。

 具体的には、免許の取得あるいは更新の申請をする時には、他の項目と一緒に
●「病気を原因として、または原因は明らかでないが、意識を失ったことがありますか?」
●「病気を原因として発作的に身体の全部または一部のけいれんまたはマヒをおこしたことがありますか?」
●「病気を理由として、医師から免許の取得、または運転を控えるよう助言を受けていますか?」
などという質問について回答を求められます。

 この項目に該当される方は、プライバシーを守ることを前提にした上で、職員から症状等について、質問されます。そのうえで、主治医の診断書の提出あるいは臨時適性検査を受ける必要のある方は、その旨指示されます。
 大切なことは、虚偽の回答をしないことです。免許所得または更新後に発作を原因として事故がおこった場合は、免許の取り消しになります。

 この法改正に至るまでに、警察庁に対して、日本てんかん協会および日本てんかん学会の地道な働きかけがあったことを申し添えます。 (外来医長 渡辺 雅子)
     
     
第2回 静岡神経医療センター 公開セミナー
 

「パーキンソン病の治療とリハビリテーション」

日時:平成14年9月29日(日) 13:00〜16:00
場所:グランシップ 10階会議室 (JR東静岡駅横 当日は、直接会場にお越し下さい。)
対象:パーキンソン病患者およびその家族と聴講を希望する一般市民
プログラム:・パーキンソン病概論
           (静岡神経医療センター神経内科 溝口功一)
       ・内科的治療
           (静岡神経医療センター神経内科 小尾智一)
       ・外科的治療
           (浜松医科大学脳神経外科 杉山憲嗣)
       ・リハビリ
           (静岡神経医療センターリハビリテーション科 鈴木一弘)
参加費:無料 
主催及び問い合わせ先:静岡神経医療センター 神経内科
             TEL:054-245-5446

     
     
第10回 静岡神経医療センター てんかんセミナー
  「てんかんをもつ児童・生徒の学校生活」

日時:平成14年8月28日(水) 9:30〜16:00
場所:国立療養所静岡神経医療センター 3階講堂
対象:学校・施設・行政などの専門職員
プログラム:・学校生活における留意点
         (静岡神経医療センター小児科医長 高橋幸利)
       ・てんかん発作の観察と対応
         (静岡神経医療センター副看護師長 古牧理恵子)
       ・ 事例検討
       ・ 病院見学
参加申し込み締め切り:平成14年8月7日(水)
         定員60名になり次第、締め切らせていただきます。
参加費:無料 (資料代として別途1000円必要)
主催及び問い合わせ先:国立療養所静岡神経医療センター(てんかんセンター)
         FAX:054-247-9781 E-mail:sodan@szec.hosp.go.jp
        電話でのお問い合わせはご遠慮下さい。
後援:静岡県教育委員会

     
       
編集後記  
   センターニュースの第2号を無事、発行することが出来ました。この新聞を発行し始めたことで治療への取組みをわかりやすく皆様にお伝えすることができることと思います。紙面にも掲載しておりますが藤原副院長の「妊娠と抗てんかん薬」という記事はてんかんを抱えている患者様だけではなく、私たち職員にとりましても大変興味深いものです。また、今号の編集に取りかかる頃、改正道路交通法が施行され認定医の診断の結果如何により、てんかんの患者様も自動車の運転免許を取得できる道が開かれました。今後もこのようなニュースがあれば掲載していこうと編集委員会は考えております。 (編集委員 新海 理由)